コラム

column

2024.10.10

根管治療には保険治療と自費どちらが良い?それぞれの相場と精度も解説

「根本的な根管治療をして完全に歯を治したい!保険適用で大丈夫なの?」「自由診療が良いとはいうけど治療費が気になる」

など、根管治療の費用について悩みを持つ人も多いのではないでしょうか。

根管治療では、保険治療と自由診療の間に大きなレベルの差があります。安さを重視するあまり、逆に高くついてしまった!ということにならないためにも、保険診療と自由診療の違いを正しく把握しておきましょう。

本記事では、根管治療における保険治療と自由診療の違いを詳しく説明しています。

根管治療における保険治療と自由診療の違いとは?

根管治療において、保険診療と自由診療ではどのような違いがあるのでしょうか。

具体的な内容を2つのポイントにて説明します。

  • 治療期間の長さ
  • 成功率の違い

治療期間の長さ

根管治療において保険診療と自由診療で大きく異なるのは、治療期間です。保険診療は1回の治療時間を30分程度、回数を4〜5回に分けて治療を行います。複雑な根管治療ではさらに通院回数が必要なこともしばしばです。数ヶ月程度はかかると考えておいた方が良いでしょう。

一方自由診療では、1回の治療で60分〜90分程度の時間をかけて細かな治療を行います。通院は2〜3回、期間はおおよそ1ヶ月もあれば十分です。

根管治療は長い時間をかけてしまうと、根管内に細菌を増殖させてしまい、再治療のリスクが一気に高くなります。

保険診療の再発率の高さの原因として、根管治療の治療期間が長さがあることは否定できません。

自由診療の治療回数の短さは、患者さまの負担を軽くするだけでなく、歯への負担を軽くしつつ、治療の成功率を上げることにも貢献しています。

成功率の違い

保険治療と自由診療の違いは、根管治療の成功率にも影響を及ぼしています。

以下の一覧表はHA Rayという人が1995年にまとめた論文の一部で、広く歯科業界で知られている内容でもあります。

 

根管治療の精度 被せ物の精度 根管治療の成功率
Case1 ⚪︎

高い精密度

⚪︎

自費の被せ物

91.4%
Case2

中程度の接密度

⚪︎

自費の被せ物

67.6%
Case3 ⚪︎

高い精密度

×

保険の被せ物

44.1%
Case4 ×

低い精度

×

保険の被せ物

18.1%

(引用元:HA Ray, 1995, Inter Endod J)

 

根管治療の成功率は治療の精度と自費の被せ物、保険適用の被せ物の種類によって最終的な成功率が変わってくるという内容です。

保険診療の場合、使用できる器具や設備、工程や素材などがあらかじめ決められているため、治療精度を上げるには限界があります。適合性の高い被せ物を作成するのも至難の業です。

良い素材が使えない場合ほど、根管治療の再発率は上がっていきます。治療の精度や再発率を考慮すると、根管治療の場合はできる限り自由診療の方が良いです。

根管治療の費用と相場

根管治療の治療費用相場と必要な詰め物や被せ物の費用相場を一覧表にまとめました。自由診療ではハイレベルな治療と良い素材を提供するだけに、保険診療に比べると割高です。

 

根管治療の費用相場

 

保険診療 2,000〜3,000円前後
自由診療 7万〜15万円前後

 

詰め物や被せ物の費用相場

 

プラスチック・銀歯 3,000〜5,000円程度
セラミック 8万〜35万円程度
金属 4万〜12万円程度

 

保険診療と自由診療、それぞれの治療について詳細を説明します。

保険診療

保険適用の範囲で根管治療を行う場合、保険の3割負担によって一つの箇所を2,000円〜3,000円で対応できます。保険診療には、レントゲン代や治療に使う薬代、根管に詰める材料費も含まれます。

治療費用は治療方法や治療に使用する薬や材料、機材によって異なるものの、自由診療に比べるかかなり割安です。

 

自由診療

保険が適用されない自由診療で根管治療を行う場合、内容にもよりますが費用の相場は概ね7万円から15万円です。

保険の対象外である高い治療法や先進医療などを行うため、治療費は高額になるものの、その効果は保険診療よりも高いです。

マイクロスコープやラバーダム、ニッケルチタンファイルなどの精密機器を始めとして、先進技術を用いた治療が行われます。

精度の高い被せ物や詰め物を使うため、治療の仕上がりも上々です。

自由診療の根管治療で使用される設備と治療方法

自由診療で使用される設備と治療方法は保険診療と違い、高精度なものが多いです。

使用される設備と治療方法について、詳細を説明します。

  • マイクロスコープ
  • ラバーダム防湿法
  • ニッケルチタン製ファイル
  • 根管充填剤

マイクロスコープ

自由診療で使用されるマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)は、暗く複雑に入り組んだ根管内を鮮明に拡大して映し出せるため、より確実な処置を施せます。

細菌感染した神経の取り残しによる再発リスクを抑え、根幹治療の成功率も高くなるため、より精度の高い治療が可能です。

アメリカでは根幹治療の専門医には、マイクロスコープの導入が義務付けられているほど、重要な設備の一つとして扱われています。

日本で導入している歯科医院は数少なく、先進治療の一つとされています。

ラバーダム防湿法

口の中の細菌感染を防ぐために、治療する歯以外をラバーダムという薄いゴムのシートで覆い被せる治療法です。

ラバーダム除湿法は点数に組み込まれていないことと、コストと時間がかかるため保険診療では使用されません。

 

ニッケルチタン製ファイル

根幹治療では細菌感染した神経を取り除くためにファイルという器具を使います。保険診療では、一般的にステンレス製のファイルが使用されます。

ステンレス製は強度によって汚れをしっかり除去できるメリットがある反面、しなやかさに欠けるため、根管内を傷つけてしまう点に注意が必要です。

 

自由診療ではニッケル製のファイルが使用されます。ニッケル製のファイルは柔軟性が高く、曲がった根幹の先端部分まで汚染を除去できる特徴を持っています。

電動モーターと手動の併用で治療できる点もニッケル製ファイルの強みです。電動モーターはしっかり汚れを取る力強さと、削りすぎ防止機能を兼ね備えています。

根管充填剤

根管の内部を綺麗にした後は、神経の代わりとなる根管充填材を根の先まで詰めます。根管充填材によって空洞になった根管内部を緊密に防ぐ治療法です。

空洞を適切に塞ぐことができなければ再度感染するリスクは高まる一方です。保険診療ではガッタパーチャという天然ゴムを元に作成された根管充填材を詰め込みます。

 

自由診療ではMTAセメントを併用して使用します。MTAセメントはアメリカで開発された骨の再生機能を持つ素材です。

根管に穴が空いている場合、MTAセメントを使用していれば自然と穴を塞いでくれます。

ガッタパーチャのみだと穴を塞ぎきれずに隙間から感染してしまうため、抜歯まで発展するケースもあります。

 

根管治療の費用をできるだけ安く抑えるには

治療費を抑えたいなら保険診療を選ぶという考え方は、根管治療においては必ずしも正しいとは言い切れません。

安く治療を済ませても再発してしまうと元も子もありません。

保険診療以外に、根管治療を安く済ませる方法を3つ紹介します。

  • 定期的なメンテナンスを欠かさない
  • 医療費控除の活用
  • 通院回数が少なく済みそうな歯科医院を選ぶ

定期的なメンテナンスを欠かさない

歯の治療は早期発見、早期治療によって費用を抑えた治療ができるようになります。定期的なメンテナンスを継続していれば、根管治療の必要性も早い段階で発見できるでしょう。

定期的な検診を怠っていると根管異常の発見が遅くなり、症状の完治までに時間がかかります。

 

医療費控除の活用

自由診療でかかった根管治療の費用は、医療費控除を利用すると負担を軽減できます。

医療費控除は1年の間に支払った治療費が10万円をこえる場合に申請すると、税金の一部が還付される制度です。

すべての自由診療の費用が医療費控除に該当するわけではありませんが、根管治療の場合は条件に当てはまる可能性があります。

領収書を取っておいて確定申告にて申告してみましょう。

 

通院回数が少なく済みそうな歯科医院を選ぶ

マイクロスコープや歯科CTなど精度の高い治療器具を使っている歯科医院は、効率の良い治療ができるため治療期間を短くまとめることができます。

通院期間が長くなればなるほど治療費用がかさみますので、できるだけハイレベルな治療を提供してくれる歯科医院を選びましょう。

目先の安さで決めてしまうと逆に高くついてしまうこともあります。

まとめ

根管治療の自由診療は保険診療の何倍もの治療費がかかりますが、精度の高い治療によって再発の可能性をより低くできます。

保険治療で再発を繰り返す可能性を考慮すると、どちらを選択すべきか大いに迷うところです。

根管治療は難しく、再発の可能性が高いことを考慮すると、自由診療も選択肢の一つとして考えてみても良いのではないでしょうか。

一生自分の歯で生きていくことを念頭において、歯の治療にかける費用を考えてみましょう。

pagetop