2024.11.29
インプラント治療をしているとMRI検査を受けられないって本当?
「インプラント治療をしているとMRI検査を受けられない」
という情報が目に入ってしまい、どうしようと不安になっている方へ向けて、本記事ではMRIとインプラント治療の関連性について詳細を紹介しています。
結論からお伝えすると、インプラント治療をしていてもMRI検査に支障はありません。
一部例外もありますので、インプラントとMRI検査の関連性が気になっている方は、ぜひ記事内容をご確認ください。
インプラント治療後にMRI検査をしても問題はない
基本的にインプラント治療をした後でも、多くのケースではMRI検査に支障はありません。インプラント治療をするとMRI検査が受けられなくなるという誤解はなぜ生まれたのでしょうか。
誤解が生まれた原因や、インプラント治療とMRI検査の関連性について詳細を説明します。
- インプラント治療とMRI検査不可の誤解が生まれた理由
- チタン合金による問題の解消
- 影が写るようになるものの問題はない
インプラント治療とMRI検査不可の誤解が生まれた理由
「インプラント治療をするとMRI検査を受けられなくなる」という誤解は、MRIの検査で磁石を使うことに関係しています。
磁石に反応する金属はMRI検査の際に外さなくてはいけません。つけたままにしてMRI検査を受けると、何らかの問題が生じる可能性があります。
ピアスや指輪など金属製のも装飾品は外すように言われるのはそのためです。
心臓のペースメーカーや人工内耳、磁石性の義眼は問題が起きる可能性が高いため、MRI検査を受けられません。
「体内に金属が埋まっているとMRI検査が受けられない」という考え方からインプラント治療をしているとMRI検査が受けられないという誤解が広がりました。
チタン合金による問題の解消
インプラントの素材にはチタンやチタン合金が使用されるため、MRI検査を受けても問題は生じません。
チタンは磁力をほぼ持たないため、磁力に吸い寄せられる特性がない金属です。磁力に強く反応するのは鉄やコバルト、ニッケルなどの強磁性金属です。
インプラント治療にチタンを使っていたとしても、強磁性金属ではないため、MRI検査には何の支障もない、ということになります。
虫歯の治療後に銀の詰め物をしていてもMRI検査に支障がないのと同じ考え方です。
なお、チタン・SUS 316ステンレス・タンタルは磁石に対して弱い反応を示す常磁性金属に分類されます。金や銀は磁石に対して反応を示さない反磁性金属です。
影が写るようになるものの問題はない
インプラント治療後にMRI検査を受けること自体は問題ありませんが、検査結果の画像に影が映り込むことはあります。
セラミックのように電波を跳ね返す素材が使われている場合があるためです。
この場合、セラミックの部分だけ電波が照射されず部分的に画像が取得できなくなります。
しかし、心配は無用です。画像検査の結果に支障が出ることはなく、体にも影響はありません。
MRI検査とは?
MRI検査とは強力な磁石と電波を使って、体内の状態を断面像として描写する精密検査です。脳や脊髄、骨盤内で起こる病気の検出に優れています。
検査は強力な磁石でできた筒の中に入って行われ、検査時間はおおよそ20分から60分とされています。
X線を用いて行われるレントゲンとは違い、電波によって検査を行うため被曝の心配はありません。
例外的にインプラント治療後にMRI検査ができないケース
デンタルインプラントに関しては、ほとんどの場合でMRI検査に支障はありません。
しかし、次の2つ治療を受けた場合はMRI検査が受けられなくなる可能性があります。
インプラント治療の際に、MRI検査が頭をよぎる方は念の為治療前に歯科医師へ相談してみましょう。
- オーバーデンチャーを使用している
- 歯科以外の用途でインプラントを使用している
それぞれのケースについて、詳細を説明します。
オーバーデンチャーを使用している
オーバーデンチャーとは、残った歯やインプラントを覆うタイプの入れ歯のことをいいます。カテゴリー的には入れ歯とされていますが、歯やインプラントを支える機構から、インプラントの一種として扱われています。
オーバーデンチャーではインプラント上部に磁石を設置するケースがあるため、MRI検査ができないことがあります。磁石の設置がなければMRI検査に支障はありません。
オーバーデンチャーの処置を検討する場合は、磁石の有無について確認しておいた方が良いでしょう。
歯科以外の用途でインプラントを使用している
歯科治療以外で利用されるいわゆる医療用インプラントを使っている場合は、MRI検査ができない可能性が高まります。
医療用インプラントが使用される医療機器は、ペースメーカー・人工内耳・磁石製の義眼、心臓人工弁・脳動脈クリップ・ステント・コイル・人工関節などが挙げられます。
強磁性金属が使用されている場合、MRI検査は受けられません。
MRI不可のインプラントで検査を受けると起きる現象
強磁性金属が体に使われているにもかかわらず、MRI検査を受けてしまうとどうなるのでしょうか。
MRI検査で起こる現象について、詳細を紹介します。
金属部分が発熱する
使い捨てカイロの鉄粉が熱くなるのと同じ原理で、体内に埋め込まれた金属が熱くなる可能性があります。
ペースメーカーが反応して発熱するようなことがあれば一大事です。体内で起きるやけどは、身体に大きな影響を及ぼすでしょう。
MRI検査ではあらゆるトラブルを廃除するために、アクセサリー類はもちろんのこと、コンタクトレンズの装着は禁止です。化粧も落とさなければいけません。コンタクトレンズや化粧の素材にわずかながら金属が含まれている可能性があるためです。
MRIの画像にノイズが発生する
金属が磁石に反応することによって、磁場が乱れてしまい画像に歪みや乱れ、画質の低下が発生する可能性があります。
MRI検査で正しい結果を得るためには磁場が均一に保たれていなければいけません。医療用インプラントなどの金属によって磁場が乱れると、検査中に発生する磁気信号が乱れてしまい、画像の歪みや一部が欠損したりします。
インプラントによってMRI検査を断られた時の対処法
前述の通り、一般的なチタン性デンタルインプラントであればMRI検査に支障はありません。
しかし、「インプラント治療をしている人はMRI検査はNG」と認識している人から断られてしまう可能性もあります。
本項では万が一MRI検査を断られてしまった時の対処法を紹介します。
インプラントの上部構造だけ外してもらう
インプラントは顎の骨に埋め込むインプラント体と歯の代わりになる人工歯、2つを繋ぐアパッチメントの3つで構成されています。
インプラントを外してくださいと指示を受けた場合は、人工歯の部分だけ外して対応しましょう。人工歯はねじ式に似たもので止められているため、一度外しても再度取り付け可能です。
チタンであることを説明する
MRI検査の前にインプラント治療を受けたことがあるか、確認されます。あると答えてMRI検査を断られてしまった場合は、インプラントの素材はチタン製であることを説明しましょう。
医療従事者ならチタンは磁力に反応が薄い常磁性である認識は持っています。チタン製のインプラントであることを説明できればMRI検査は問題なく受けられるでしょう。
まとめ
MRI検査にインプラントNGという誤解の元は、インプラントに強磁性の金属が使われているという誤った認識です。
MRI検査では強い磁場を発生させるため、磁石に反応する強磁性の金属が体内にあると熱の発生などの不具合が発生します。
しかし、デンタルインプラントの場合は素材に常磁性のチタンが使われているため、MRI検査に支障はありません。
オーバーデンチャーなどの一部例外もありますので、MRI検査とインプラントの関連性が気になる方は歯科医師へ相談のうえ、悩みを解消しましょう。