歯の根が痛い原因と対処法とは?|抜歯を回避するための治療法と応急処置

歯の寿命を左右するのは土台となる根の治療の精度にかかっている、と言っても過言ではありません。
激痛を伴う急性症状から、自覚症状の少ない慢性的な腫れまで、歯根のトラブルはさまざまです。
本記事では、症状別の痛みの見極め方から、マイクロスコープやCTを駆使した最新の治療プロセスまでを徹底解説しています。大切な歯を一生使い続けるための、根管治療の全貌をご確認ください。
歯の根が痛くなる主な4つの原因

ピンポイントに歯の根が痛くなる場合、主に4つの原因が考えられます。それぞれの原因について詳細を紹介します。
- 歯髄炎(しずいえん)
- 根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
- 歯根破折(しこんはせつ)
- 歯周組織の炎症
歯髄炎(しずいえん)
歯髄炎とは、歯の中心部にある歯髄が炎症を起こした状態です。主に進行した虫歯が神経まで達することで発症します。歯髄は神経や血管が集中している箇所です。
硬い歯に囲まれた内部で炎症が起きると、組織が腫れても膨らむことができず、内部の圧力が急上昇して神経を強く圧迫します。
場合によっては夜も眠れないほどの激痛や、脈打つようなズキズキとした痛みが生じることもあります。
冷たいものや熱いものが極端にしみるのも歯髄炎の特徴です。痛みを感じる段階ではまだ神経を救える可能性がありますが、放置すると神経が死んでしまい、さらなる重症化を招いてしまいます。
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
根尖性歯周炎は、歯の根の先端を囲む組織に炎症が起き、膿が溜まる病気です。神経を抜いた歯や、虫歯の放置で神経が死んでしまった歯に多く見られます。
神経がないのに歯が痛む理由は、根管で繁殖した細菌が根の先からあふれ出し、顎の骨や周囲の膜を攻撃しているためです。根尖性歯周炎の主な症状として、噛んだ時の痛み、歯茎の腫れ、根元を押した時の違和感などが挙げられます。
急性の症状では顔が腫れるほどの激痛を伴いますが、慢性症状では時々歯が浮いた感じがする程度の鈍痛で進行するため、気づかぬうちに顎の骨が溶かされてしまうこともあります。
放置すると抜歯のリスクが高まるため、根管治療による除菌が必要です。
歯根破折(しこんはせつ)
歯根破折とは、歯の根っこが割れたり、亀裂(tooth crack) が入ったりすることをいいます。神経を抜いた歯に起こりがちなトラブルです。
神経を失った歯は、栄養が届かなくなるため、枯れ木のように脆くなっています。噛み合わせの強い力や食いしばりなどの負荷で割れてしまうほどの脆さです。
歯根破折の主な症状は、噛むと急に痛む、特定の方向から力がかかると激痛がするなどが挙げられます。
割れた隙間から細菌が入り込むため、周囲の歯茎が局所的に腫れることも多いです。一度割れてしまった根っこは修復が難しく、抜歯以外に選択肢がないケースもあります。
歯周組織の炎症
歯肉や歯根膜、顎の骨など、歯を支える周囲の組織の炎症によって、根元に痛みを感じるケースです。
歯周組織の炎症の主な原因には、歯周病や歯根膜炎が挙げられます。
歯周病は悪化すると、深い歯周ポケットから細菌が入り込み、根の深い部分や骨の近くで炎症を起こす疾患です。症状が進行すると、歯茎が全体的に重苦しく痛んだり、歯がグラグラしたりします。
一方、歯根膜炎は、歯と骨の間でクッションの役割をする歯根膜が、食いしばりや噛み合わせの不具合などの過度な負荷によって炎症を起こす状態です。
いずれも噛み締めた時に歯が浮いたような感じや、鈍痛を伴います。放っておくと健康な歯であっても土台丸ごと失うリスクがあります。
【セルフチェック】あなたの痛みはどのタイプ?

一言に歯根の痛みと言っても、その症状はさまざまです。4つの痛みのタイプごとに、症状や対処法を詳しく説明します。
- タイプA:ズキズキと激しく痛む
- タイプB:噛むと痛い・響く
- タイプC:歯茎が腫れている・おできがある
- タイプD:特定の動作で急に痛みが走る
タイプA:ズキズキと激しく痛む
ズキズキと痛む症状の詳細は以下の通りです。
- 何もしなくても脈打つように痛い
- 冷たいものだけでなく、熱いものもしみる
- 夜、布団に入ると痛みが強くなる
- 痛み止めを飲んでもあまり効かない
虫歯菌が神経まで到達し、強い炎症が起きている状態です。歯の内部で血流が増え、圧力が高まることで神経を圧迫することから、脈打つようなズキズキ感が生じます。
放置すると神経が死んで一時的に痛みは引きます。しかしその後、根の先に膿が溜まる深刻な症状へ進行するため、早急な処置が必要です。
タイプB:噛むと痛い・響く
噛むと痛む・響く感じがする症状の詳細は以下の通りです。
- 普段は平気だが、食べ物を噛むと「ピリッ」「ズキッ」と痛む
- 歯が浮いたような感じがして、上下の歯を合わせたくない
- 歯を指で押すと痛みを感じる
- 過去に神経を抜いた(被せ物をした)歯である
食べ物を噛んだり上下の歯を合わせたりした際に「ズキッ」と響くタイプです。噛まなければ痛みは感じません。この状態は歯の内部ではなく、歯の根の先や、歯を支える膜(歯根膜)に炎症が起きているサインです。
神経を抜いた後の再感染や、噛み合わせの負担が原因であることが多く、歯が浮いたような違和感を伴うこともあります。放置すると根の先に膿が溜まり、周囲の骨を溶かしてしまう恐れがあります。
タイプC:歯茎が腫れている・おできがある
歯茎が腫れている・おできがある症状の詳細は以下の通りです。
- 歯茎の根元あたりがぷっくりと腫れている
- 歯茎から膿(うみ)が出てくることがある
- 疲れが溜まると歯茎に違和感が出る
- 痛みはそれほど強くないが、常に重苦しい
おできのような腫れの正体は、歯の根の先に溜まった膿です。膿が出口を求めて歯茎を突き破って出てきています。これをフィステルといいます。
時々鈍痛や違和感がある程度なので、つい放置してしまいがちですが、内部では顎の骨が溶け始めている危険な状態です。自然に治ることはないので、早めに歯科医院へ行きましょう。
タイプD:特定の動作で急に痛みが走る
特定の動作で急に痛みが走る症状の詳細は以下の通りです。
- 固いものを噛んだ瞬間に「ビシッ」と鋭い痛みが走った
- 以前に比べて、特定の歯だけ違和感が強くなってきた
- 歯茎の一部だけが局所的に腫れている
固いものを噛んだ瞬間や、特定の角度で力がかかった時に「ピリッ」「ビシッ」と鋭い痛みが走るタイプです。この症状が現れる場合は歯の根っこにヒビが入ったり、真っ二つに割れたりしている可能性が高いです。
ヒビの隙間に細菌が入り込むことで炎症が起こります。放置すると割れ目が広がり、最終的には抜歯を避けられなくなるため、早めの処置が必要です。
歯の痛みでよくある質問
- 歯の根元がジンジンするのはストレスが原因ですか?
A. ストレスそのものが直接虫歯を作るわけではありませんが、強いストレスによる食いしばりや歯ぎしりが、歯根膜に負担をかけて痛みを引き起こすことがあります。また、免疫力の低下によって歯周組織の炎症が悪化するケースもあります。特に「朝起きた時に奥歯が痛い」「噛むと響く」といった症状がある場合は、噛み合わせや歯ぎしりの影響も疑われます。 - 歯の根元が痛いのですが、虫歯ではないこともありますか?
A. はい、あります。歯の根元の痛みは、進行した虫歯だけでなく、歯周病・歯根膜炎・歯根破折(ヒビ)・食いしばりなどが原因の場合も少なくありません。特に「噛むと痛い」「触ると響く」「歯茎が腫れている」といった症状は、根の先の炎症や歯を支える組織のトラブルが関係している可能性があります。原因によって治療法が大きく異なるため、CTやレントゲンによる精密検査が重要です。 - 鼻の下あたりの歯の根元が痛いのは副鼻腔炎の可能性もありますか?
A. 上の奥歯の根は副鼻腔(上顎洞)と非常に近い位置にあるため、副鼻腔炎によって歯の根元に痛みや圧迫感を感じることがあります。特に「複数の上の奥歯が同時に痛む」「前かがみで痛みが強くなる」「鼻づまりや頬の重だるさがある」といった場合は、副鼻腔由来の痛みも考えられます。一方で、根尖性歯周炎など歯自体の感染が原因の場合もあるため、歯科と耳鼻科の両面から診断することが大切です。
とりあえず痛みを抑えたい時の応急処置

どうしても痛みが治らず耐えられない場合の緊急措置を3点紹介します。
- 市販の鎮痛剤を使う
- 頬の外側から冷やす
- 安静にして体温を上げない
市販の鎮痛剤を使う
痛みが激しいのにすぐに歯科医院を受診できない場合は、市販の鎮痛剤に頼るしかありません。
代表的な鎮痛薬には、ロキソプロフェン(ロキソニンSなど)やアセトアミノフェン(カロナール、バファリンなど)、イブプロフェン(イブなど)が挙げられます。中でもロキソプロフェンは、抗炎症作用が高くズキズキとした痛みを抑えるのに効果的です。
鎮痛剤は一時的に痛みを麻痺させているだけで、根本的な解決には至りません。薬の効果が切れると痛みがぶり返します。痛みが再発する前に歯科医院で治療を受けましょう。
頬の外側から冷やす
歯の根の痛みが激しい時は患部周辺を冷やすのも効果的です。血管を収縮させ、神経の興奮による痛みを抑えることができます。
冷やすときは口の中から直接冷やすのではなく、頬の外側からじんわりと冷やします。濡れタオルや、冷えピタなどの冷却シートを頬に当てるのが理想的です。
氷を直接口に含んで急激に冷やすのは逆効果です。 歯に直接的な冷刺激が加わると、知覚過敏のように痛みをさらに増幅させてしまう危険があります。
冷やしはあくまで炎症を和らげる鎮静が目的です。一時的に痛みが治ったら早めに歯科医院へ向いましょう。
安静にして体温を上げない
歯の根の痛みは、血流が増えることで歯の内部や周囲の圧力が上昇し、神経を圧迫することで発生します。体温が上がる行動は痛みをダイレクトに悪化させる大きな要因です。
痛みがひどい時は、入浴、激しい運動、飲酒などは控えるようにしましょう。また、就寝時に横になると頭部に血流が集中し、痛みが強くなることがあります。その場合は、枕を高くして上半身を少し起こした状態で休むと、圧力が緩和されて楽になることがあります。
歯科医院で行われる歯の根の治療
歯科医院で行われる根管治療の一般的なプロセスと使用する設備について、詳しく紹介します。
根管治療のプロセス
根管内の洗浄・消毒
器具で汚れを除去した後は、目に見えない細菌を取り除くために洗浄液による消毒を行います。専用の洗浄液を根管内に満たし、超音波振動などで細部まで行き渡らせることで、器具が届かない複雑な部分の細菌まで殺菌する仕組みです。
無菌状態になるまで洗浄と消毒を繰り返すことで、将来の再発を防ぎます。
根管充填(こんかんじゅうてん)
根管内を十分に消毒した後、再び細菌が入り込まないように専用の材料で根の管を隙間なく密閉します。使用されるのは、ガッタパーチャという天然ゴムに近い素材です。
根管にわずかな隙間があれば、細菌の住処となり再発を招いてしまいます。充填は根管治療の中で最も精密さが求められるステップです。
土台と被せ物の装着
根管内が密閉された後は、歯の強度を補うために土台を立て、その上に被せ物を装着します。神経を抜いた歯は枯れ木のように脆く、そのままでは噛む力に耐えらません。
金属やファイバーポストでしっかりとした柱を作り、その上から精密な被せ物を被せることで、再びしっかり噛める状態に復元します。
根管治療で使われる設備
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)
マイクロスコープは、患部を数十倍に拡大して観察できる歯科用顕微鏡です。根管は非常に細く複雑に枝分かれしており、肉眼やルーペだけでは暗い内部を正確に把握するのはほぼ不可能です。
マイクロスコープを使えば、細菌の見落としや小さなヒビを確実に発見でき、治療の精度が飛躍的に向上します。
マイクロスコープがあれば、削りすぎを防ぎ、再発率を抑える精密な根管治療が実現可能です。
ラバーダム(ゴムのマスク)
ラバーダムとは、治療する歯だけを露出させるための、お口全体を覆うゴム製の薄いシートのことです。
ラバーダムがあれば、根管内への唾液の侵入を完全に遮断できます。
唾液には無数の細菌が含まれており、治療中に少しでも入り込むと再感染の原因になります。また、強力な消毒薬が口に漏れるのを防ぎ、小さな器具の誤飲も防止します。ラバーダムは精密かつ安全な治療には欠かせない設備です。
歯科用CT
歯科用CTは、お口の中を3次元の立体画像で撮影できる装置です。従来の2次元の平面画像では、重なっている影や奥行きまでは把握しきれませんでした。
CTを使用することで、根管の数や走行、根の先の膿の広がり、骨の厚みまでミリ単位で正確に確認できます。治療前に内部構造を完全に把握できるため、より確実で無駄のない、高度な根管治療が実現可能です。
歯の根の痛みは放置しておくと危険です〜安岡デンタルオフィス梅田院より
根管治療は歯を救う最後の砦と言っても過言ではありません。適切な設備と正しいプロセスによって、一度は抜歯を覚悟した歯を再び取り戻せる可能性があります。違和感に気づいたら、できるだけ早めに歯科医院を受診しましょう。
安岡デンタルオフィス梅田院では、根管治療に必要とされる最新の設備を揃えて万全の体制を整えています。根管の根治にお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。患者さまにとって最適な治療法を提案させていただきます。
