全顎治療(フルマウス治療)とは?
全顎治療とは咬合再構成(フルマウスリコンストラクション)とも言われており、口腔機能が
1、機能的に
2、生物学的安定性を伴い
3、審美的で
4、構造学的に長期安定するように
審査診断し、患者様にご納得いただいたうえで治療を行います。歯科医師、歯科衛生士だけでなく、患者様のご協力が必要不可欠な治療です。
当クリニックは、「木を見て森を見ず」の従来の歯科の常識を超えて、患部だけに着目するのではなく、お口の中全体を一つの器官として扱う全顎治療(フルマウスリコンストラクション)の考え方を重視しています。もし、来院されたときの歯の痛みの原因が反対側の噛み合わせによるものだとしたら?不安や痛みを取り除き、長期安定性の実現のためにも、虫歯や歯周病の治療だけでなく、特に噛み合わせの治療、インプラントや矯正治療、補綴治療などのすべての分野で総合的な治療をご提供できるように、日々研鑽を積んでいます。
8020運動というのはご存知でしょうか?
80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという運動です。
実は80歳で20本以上歯が残っている方には、かみ合わせや口腔内の環境に類似性があることがわかってきました。
第一に、1級正常咬合とよばれるかみ合わせです。このかみ合わせでは、理想とする口腔機能である①左右対象に噛むことができる②メンテナンスがしやすい歯並び③前歯が奥歯を守り奥歯が前歯を守る機能、これらを有しています。
しかし現代では不正咬合の方が増えているとも言われており、食事の時、スポーツ中の食いしばり、就寝時の歯ぎしり・・・など生活の中でも断続的にかかる力によって、歯が割れてしまったり、顎関節に症状がでてしまうこともあります。
次に、口腔内細菌のコントロールです。
お口の中には400種類以上の細菌が常在し、プラーク1gの中には、最大で1,000億個の細菌が存在するといわれています。
間食の頻度を調整したり、丁寧な歯磨きを心がけることもお口の中を清潔に保つうえでもちろん必要ですが、歯周病菌をはじめとした細菌数を減らすことも口腔内の炎症をおさえるためには大切です。
細菌と力をどのようにコントロールするのか?ということは、歯を失わないようにするための重要なポイントです。
不幸にして問題が生じてしまったからにはその原因を追求し、問題点を一つ一つ解決し、健康な状態が長らく続くようにすることが、当クリニックの使命だと考えています。
こんなお口の症状、放置していませんか?
当クリニックに来院いただく患者さんとお話ししていると、問題点が複雑に絡んでいるケースに遭遇します。
以下のような問題を抱えている方は、いずれも先を見据えた対応が必要と思われるケースです。全顎治療を検討することをおすすめします。
- 過去にお口全体の虫歯や歯周病を治療したが再発してしまった
- ブラッシングやメンテナンスが十分でなかった気がする
- 歯茎から血や膿が出る
- 歯の欠損を放置してしまった
- 合わない義歯(入れ歯)を無理して使っていた(入れ歯は作ったがほぼ使用していなかった)
- 噛み合わせの違和感があったがいつの間にか慣れてしまった
- 顎がカクカク鳴る
- お口が開けづらくなってきた
- 左右どちらかでしか噛んでない気がする
- 睡眠時無呼吸と言われた
- 歯ぎしりが激しいと言われる
- 前歯が前よりも出てきた気がする
全顎治療(フルマウス治療)を行う目的
歯科医院として主訴の解消に力を注ぐのはもちろんですが、問題の原因を追究して解決することも欠かしません。
また、例えば型取りなどの精度を高めることも重要ですし、根管治療や歯周病治療、噛み合わせの調整など、すべての治療においてお口全体の健康と機能を守り、美しさを高めることにつながるよう配慮しています。
現状に至ってしまった原因の追究
全顎治療が必要になる患者さんは、かみ合わせのバランスが乱れているケースがほとんどです。その原因は患者さんによって異なりますが、特に多いのが「不正咬合による歯への過重負担」です。無意識のうちに歯に強い力が加わり、歯やかみ合わせをボロボロに壊してしまう恐れがあります。
さらに過去にさまざまな歯の治療歴がある場合も、注意が必要です。痛む場所や治療中の仮歯を避けるようにして噛んでいると、その積み重ねで噛む位置が少しずつずれてしまい、現在のお悩みにつながっている可能性もあるのです。
治療前にはパノラマレントゲンによる検査を行い、問診票に記入していただいた内容やカウンセリングをもとに、患者さんのお口に関係する情報を集めます。
そして、実際にお口の様子を見ながら原因を分析した後は、治療を通じて正しいかみ合わせの位置に戻し、全体のバランスが良い状態で噛めるように治療していきます。
お口全体から考える「本当のお口の健康」
本当のお口の健康を実現するには、かみ合わせのバランスを整えたうえで、細菌や力に負けないお口の環境づくりが必要です。お口の中に細菌が多い状態だと、どれだけ治療をしても虫歯や歯周病に悩まされる恐れがあります。
そこで治療では歯垢や歯石を取り除いたうえで、歯科衛生士が中心となって歯みがきの仕方を丁寧にアドバイスしております。自分の力で歯を正しく磨けるようになると、清潔さが保たれて細菌の影響を受けにくくなるのです。
その他にも、歯ぎしりや食いしばりなどの力が強い場合はマウスピースを用いた治療、歯並びが悪い場合は成人の患者さんでも矯正治療を勧めるケースもあります。
さらに、年に数回の定期的なメインテナンスを通じて患者さんの歯を管理し、治療後も当クリニックが積極的にサポートしてまいります。
リスク・副作用
- 治療期間の変更:咬合再構成には長期間の治療が必要となる場合があります。歯や歯肉の状態、反応、骨の状態、歯の萌出や動きには個人差があり、計画した期間が変更されることがあります。
- 治療の成果:指示された装置を十分に使用しなかったり、口腔清掃の不備、悪習癖の改善努力、予約を守らない方の場合、治療が正常に進行せず、治療期間が長引くだけでなく、治療で良好な結果が得られなくなることがあります。
- 治療計画の変更:咬合再構成の治療には複数の手技を平行して行う場合がほとんどです。治療の途中で口腔衛生状態の悪化、下顎の成長が著しく変化したり、舌の突出癖が治らない場合など、治療期間の延長、治療方針の変更、抜歯などが必要になることがあります。
- 再発と再治療:歯冠修復治療後、口腔清掃の不備、歯ぎしり、喰いしばり等の悪習癖の悪化などにより虫歯や歯周病の再発、修復物や歯根の破折が起こった場合、再治療が必要となり別途費用がかかる場合があります。
- 親知らず(第三大臼歯)の抜歯:親知らずのある方で、生えてくる余地が足りない場合、18~20歳前後にその萌出力によって、再び歯並びや咬み合わせが悪くなることがあります。このような恐れがある場合には、事前に親知らずの抜歯が必要になります。
- 歯の痛み:修復物を入れたばかりのときや、治療をした後は歯が浮いたように感じることや、痛みを感じる場合もありますが、通常数日で軽快します。あまりに症状が強く日常生活に支障を来たす場合は早目のご相談が必要です。
- 歯の失活:非常に稀に、歯を削る或いは矯正治療により移動したことでその歯の神経が壊死することがあります。過去に物理的外傷を受けたことがある歯は、この危険性が増大します。また、大きな虫歯の治療で歯髄(歯の神経)を温存した後に急性炎症を起こしたり、歯髄壊死を起こした場合には根管治療が必要になります(痛みを伴う場合と全く痛みを伴わない場合があります)。
- 顎関節症:現代人の顎の関節はとても弱く、音がする、開けにくい、痛みを覚えるなどの症状を訴える方が増えています。治療前に既に顎関節症の原因がある場合、治療中に症 状が出る場合もあります。顎関節症の原因には、構造的要因、過去の外傷、悪い咬み合せ、精神的要因や緊張によるもの、咬合力によるもの、態癖によるものなどがあります。通常は複数の原因が重なって顎関節症を引き起こします。咬み合わせが原因となっている場合は治療で咬みあわせを改善することにより、顎関節症は軽減します。態癖などに関する歯科医師の指導を遵守いただくことが必要不可欠です。
- 顎関節症は一度発症すると回復が困難になるケースもあります。